終末期患者の腹部症状に対するアロマトリートメントの症例報告|スタッフブログ|林山朝日診療所グループ|神戸市須磨区・長田区・西区

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2009年02月27日

終末期患者の腹部症状に対するアロマトリートメントの症例報告

目的

終末期患者の身体症状のうちで食欲不振、悪心嘔吐、腹痛などの腹部症状の改善は、終末期患者にとって疼痛の次に緩和を促すことでQOLの向上に繋がると言われています。今回、肝細胞癌の患者で肝腫大、腹水貯留、便秘により腹部膨満感、腹痛、食欲不振といった腹部症状に対してアロマトリートメントによる、症状緩和とリラクセーションを目的に実施した症例を報告する。

対象と方法

68歳、女性 肝細胞癌・C型肝炎 両側腹部痛・腹部膨満感、嚥下困難感、両下肢浮腫のため体動困難になり緩和ケア病院に入院。疼痛は入院7日目からデュロテップパッチ1.25mgで開始され2.5mgまで増量してコントロールされる。排泄は下痢便で少量ずつ残便感あり、排尿も6回/日で残尿感がある。夜間熟睡感なし。腹部アロマトリートメントの希望あり、実施期間約2週間で1・5日置きに濃度2%:ローレル(Laurus nobilis・プラナロム社)0.2ml、マジョラム(Origanum majorana・プラナロム社)0.2mlグレープシード油(Vitis vinifera・メドウズ社)20mlにて、本人の楽な体位の仰臥位で癒しの音楽を流しながら20分前後実施する。

結果と考察

腹水穿刺週1回施行されていましたが、腹部アロマトリートメント後スムーズに排便があり、「排尿も多くあり気持ちよい」や「腹部楽になり歩行しやすくなった」「夜も良く眠れる」と言われる。トリートメント中はご主人や妹様の話、今までの人生の話をされる。食事ほとんど摂取できなくなり、トリートメント後の排泄も浣腸を施行しないと出なくなるが「こうやってマッサージしてももらっている間は楽になるけど他は1分1秒がしんどくなってきていると」言われながら、腹部アロマトリートメント希望される。苦痛と全身倦怠感が著明となりセデーション開始、5日目に永眠される。亡くなる前日は元々エステにずっと通っておられた方なのでデコルテ・顔のアロマトリートメントを実施、前腕・手は家人と共にトリートメントを実施、とても気持ちよさそうな表情をされる。癌終末期患者は身体的な苦痛・死への不安などから交感神経優位のストレス状態にある。腹部アロマトリートメントにより緊張状態を緩和し心身共にリラックスした状態になり副交感神経優位となり腸の蠕動運動・排尿筋・括約筋収縮の働きが良くなり、排泄が改善されたと考える。また、副交感神経優位になることで睡眠にもつながったと考えます。アロマトリートメントの間は楽になれると少しでも心のやすらぎにつながり、苦痛の緩和が出来たのではないかと考えます。亡くなる前日のデコルテ・顔面・前腕・手のアロマトリートメントでは緊張している家人も一緒に癒しの場となり手と心が触れ合うことが出来たと思います。今後、終末期患者のすべての人・症状にアロマセラピーが有効とは限りませんが、希望を伺いながらケアの中に取り入れ今後も検討していきたい。

中村晴美 訪問看護ステーションわたぼうし

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