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2012年10月02日

2012年の春に縁あって東北のホスピスを訪れた。津波にさらわれた低地の廃墟や瓦礫はまだ目立っていたが、クリニックのある山間部は無事だった。
「呼吸器の医者になって30年くらいだけど、その間で肺癌の寿命は1年くらいしか延びてないですね」
何故定年過ぎてから緩和ケアに取り組み始めたのかを問うた時の皮切りの返事だった。
「私の経験では最終生存率は今も昔もあまり変わっていない。肺癌の最後の部分は結構苦しいので、何とかしなくちゃなと思ったんです。まあ早期発見早期治療を唱え続けた罪滅ぼしとも言えますね」と微笑んだ。
開設間近に私たちの緩和ケア病棟を訪れた際に有床診療ホスピスの経営苦難を説いたが「仲間がもういるから」と気色ばみながらも決然とした顔貌が印象的だった。看護師長の仲間は既に去ったが、本人も含めて医師3人の結束は固いままだった。
全国に例外的に存在する6か所の有床診療所ホスピス緩和ケア病棟のこころざしは常に苦難とともにある。パイオニアと呼ぶにはその後の道筋を辿るものは余りに少ないが、順風の吹くことを願いながら今しばらくはこの道に励んでいくのだろう。私を含めて。

林山クリニック希望の家 院長 梁 勝則

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